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聴こえないわたし 聴こえるわたし ~ことば&暮らし~

それぞれの「ことば」を「知ること」からはじめよう
by machi-life
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第3回 (2009.3.6) “聴者は ろう者よりも賢い?!”

聴こえないわたし」と「聴こえるわたし」がブログをはじめた理由

    ① 聴こえる人から見た「暮らし」、聴こえない人から見た「暮らし」とは何かを知る。
    ② ふたつの「暮らし」の違いや共通点を発見し、相互理解に扶助する。
    ③ 改めて「暮らし」について考えることで、わたしたちが毎日をシンプルにかつ豊かに
      送るための手法を探る。


"聴こえないわたし”-Chie

東京ディズニーランドオープンの年に誕生。手話講師
趣味は、写真、読書、映画鑑賞、ゴルフ

"聴こえるわたし”-Mau

“Imagine”が発表された年に誕生。英会話・スペイン語会話講師
旅、自転車、食べることが好き

♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆

Mau: ではでは・・・ いきなり単刀直入ですが。

Chie: はい。お願いします。

Mau: 初恋はいつでしたか~?

Chie: 単刀直入ですね(笑) 初恋は小学2年の時でした。

Mau: すみません・・・ちえさんの小学校の同級生ですか?

Chie: 体育の先生で、どんなスポーツでも「できる」人だったので、バレンタインデーはチョコレートを下駄箱に入れて渡しました(笑)

Mau: 初恋は先生だったんですか!年上がお好みなのですね!
チョコレートを下駄箱とは・・・なんとも懐かしい響きです♪

Chie: 年上が好みだなと思った時は、このときくらいだったと思います。先生はびっくりしたと思いますが、お返しもいただけました。兄と父の影響を受けていたせいか渋い大人が好みでした。

Mau: お父さまとお兄さんはクールでしぶーい男前タイプなのですか?

Chie: それほどでもないですが、年上の男性と行動することに慣れていたのかもしれないですね。
いつも服は兄のお下がりを着ていたので男性の影響はあったと思います。母も産む前までは100%「男の子!」と思っていたそうです。小学校の初恋は、中学部に上がる時、その先生が部活の顧問になったこともあって自然に思い出に変わりました(笑)。


Mau: なるほど~。中学時代に思い出に残っていることは何ですか?ろう学校ならではの行事もありましたか?

Chie: 中学時代に思い出に残っている事、あまりないですね。

聾学校ならではの行事といえば、小学校と同じように、今度は学校単位で、近くにある中学校との交流会(一緒に町のゴミを拾ったり、部活で合同練習したり)がありました。その交流会も正直、あまり好きではなかったですね。「うまくなじめない」といった感じで浮いていたと思います。
むしろ、高校時代の方がインパクトありすぎて中学部時代の記憶が薄れていっている感じです。


Mau: そうだったんですね。「交流会」という、ある種"作られた"環境の中で、不特定多数の人と短時間で仲良くなるというのは、人によっては・・・特に中学生ぐらいだと苦手な人も多いかもしれませんね。

Chie: そうですね。ゴミ拾って早く帰ってホッとしたい気持ちでいました。同級生は楽しかったと思いますけど。それが3年間続きました。

少し話がそれますが、当時の自分はあまり気持ちや意見を言わず、黙っていることが多かったような気がします。中学校時代に生徒会の役員をやらせていただいた(少人数だから無理矢理指名受けた!?)のですが、そのときの会長さんに「自分はどう思うの?」と指摘されて以来、少しずつ同級生に限らず後輩と仲良くなる事ができました。


Mau: その当時、「うまくなじめない」と感じたのはちえさん自身がシャイで、初対面の人たちとすぐに打ち解けるのが難しかったということですか?それとも、意思疎通のできるろう者の友達同士とは違い、聴者の友達とはどう接していいのか戸惑っていたので楽しめなかったということでしょうか?

Chie: ろう学校の中では同級生だけの付き合いが多かったと思いますし、変に真面目すぎたんですね。後輩とも仲良くなろうとしなかったし、先生の言いなりになっていました。

交流会においては、聴者の友達とはどう接していいか分からないという戸惑いと、そもそも交流会なんて楽しめるものがない、と思い込んでいました。聴者はろう者よりも賢いし、できる人だと思っていたので、劣等感を持っていました。

その劣等感は大学に入ったあとに消えていったのですが、当時は、聴者は全員が賢いから人一倍の努力が必要なんだと思っていました。


Mau: 「聴者はろう者より賢いし、できる人」だと思うようなことが日常的にあったんですか?

Chie: 先生から常に「聴者の学校に通っている難聴者は偉い。ろう学校に通っているろう者は聴者よりも人一倍努力をしなければいけない」と言われていました。そこから自然に、ろう者は努力をしなきゃいけないのかと思っていました。聴者に対する先入観と、昔、スイミングスクールで聴者にいじめられた経験から、戸惑いと劣等感を持ったのだと思います。そして、発音の練習の他に、音を聞く訓練もありました。

先生が後ろに回って手を叩き、その回数を答えるという訓練ですが、私だけが答えられなくて、同級生がスムーズに答えていました。このときに、「あなたは全く聴こえないからろう者だね。(同級生は)難聴者だね」と聴力で振り分けられていました。

そのときの自分は、反発もできず、反発する事すら分からず、いつの間にか先生の言われた通りになっていました。


Mau: 先生はちえさんに強くなって欲しかったのかもしれませんが、これが長期間続くと、「聴こえる」「聴こえない」という基準で人間の価値を判断するように思い込んでしまいそうです。

すみません・・・言葉が出てきません。
私自身が知らなかった事実にショックを受けてます。でもそう思う人がいることも否定できない世界にわたしたちは生きているのも事実だと思います。聴こえる人の世界に合わせてもらっている現実にも。

Chie: 「聴こえない事」に甘えてはいけないというメッセージだったかもしれないですね。

そういう意味では、感謝していますし、その先生が学校の中で一番厳しい方でした。その先生が後に、高校時代に手助けしてくれたので「嫌いなのか、好きなのか」分からないですけど、当時は嫌でしょうがなかったですね。反発できないというよりは、洗脳されている自分自身に気がつかず、それが高校時代に爆発しましたね。
すみません、ちょっとストレートな内容になってしまいました。


Mau: とんでもない!こちらこそ言いにくいことを話してくださってありがとうございます。

Chie: 聞いてくださってありがとうございます。

その先生と最近、メールでお話ししましたが、「ろう学校にはろう者の先生が必要である」とおっしゃっていました。たぶん時代の流れで、聴こえる先生と聴こえない先生が共同で教育現場を通して育てていく事が更に求められるようになったのかもしれないですが、こうしてお話ができる事は、ある意味で先生のおかげでもあるんですよね。


Mau: なるほど、それはそうかもしれないですね。

今現在は聴こえる人の「社会」が圧倒的な力を持っているので、ろう者の方が同じように仕事なり生活をしていくには、「話したり」「“聞いたり”(口や表情を読んだり)」するというような訓練を学校で教えていくことは必要不可欠なのだと思います。当時その先生がされていたことも分かるような気もしますが、当時のちえさんの心に何かしらの劣等感を植え付けてしまうようなものであったとしたら、それでいいのだろうかという疑問も残ります。現場を知らない側からの無責任な意見ですが・・・。

お二人が今また新しい立場でメールのやり取りをしていらっしゃるのは素晴らしいことだと思います。 

Chie: ありがとうございます。それで良かったのかどうか、ということについては賛否両論があります。

でもろう学校にいた当時は「話せる事」「読み取る事(聞く事)」が重要であると認識していた事から、自分自身が「ろう者にはなりたくない、手話なんか必要ない」と思っていました。

学校を出たときに手話が無意味になると本気でそう思っていました。


Mau: 当時は辛い体験をされましたが、さまざまな人の立場で、ろう者やろう教育について考える「今」につながる基盤となる体験を身を持って経験されてきたのですね。

Chie: 訓練自体はそこまで辛いとは思わなくて「やらなきゃいけない」という感覚で、歯を磨くのと同じような感覚です。

でも当時の訓練を「厳しい訓練」と説明するろう者はいます。その人にとっては本当に「辛い」と思ったのだと思います。でも、当時の体験が今の自分の基盤になっていることは間違いないですね。


Mau: 今現在手話を教えるという仕事に関わり、手話ができる人を育てていくという現場で働いている自分をどう思っていらっしゃいますか? ちえさんにしかできないことがたくさんありそうです。

Chie: 現在、手話講師としてやっていること自体、当時は全く想像できなかったですが、そういう体験も含めて「手話」という言語に対してきちんと自分自身が向き合って勉学を深めていくという責任は感じています。

聴こえる人たちが手話を覚える事は、言語を学ぶ事と同じであり、それなりの価値に見合った学習を提供できるように自分自身、もっと聴こえる人たちと一緒に学び合っていきた いですね。手話を通して、聴こえる人と聴こえない人が一緒に仕事を進めていくモデルになれたらというのが一つの目標ですが、目標はこれからも増えそうな予感がします。


Mau: ありがとうございます。
「インパクト大」の高校時代のエピソードは、次回お聞かせくださいね。

Chie: OKです。
インパクトのある高校時代のお話はきっと期待できますよ(笑)。


Mau: おおっ!!それはそれは楽しみです~!!

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今週も長文を読んでいただきありがとうございます。
皆さんはどう思われますか?コメントを残していただけると嬉しいです。

次回の更新は、3月13日(金)を予定しております。
by machi-life | 2009-03-06 00:00 | mau+chie life
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