聴こえないわたし 聴こえるわたし ~ことば&暮らし~

それぞれの「ことば」を「知ること」からはじめよう
by machi-life
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第7回(2009.04.03)Chie、北欧から無事に帰国

「聴こえないわたし」と「聴こえるわたし」がブログをはじめた理由
    ① 聴こえる人から見た「暮らし」、聴こえない人から見た「暮らし」とは何かを知る。
    ② ふたつの「暮らし」の違いや共通点を発見し、相互理解に扶助する。
    ③ 改めて「暮らし」について考えることで、わたしたちが毎日をシンプルにかつ豊かに
      送るための手法を探る。


"聴こえないわたし”-Chie
東京ディズニーランドオープンの年に誕生。手話講師
趣味は、写真、読書、映画鑑賞、ゴルフ

"聴こえるわたし”-Mau
“Imagine”が発表された年に誕生。英会話・スペイン語会話講師
旅、自転車、食べることが好き

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Mau: おかえりなさい!どうでしたか?二回目の研修旅行は?

Chie: 最初の研修旅行よりも冷静に見ることができたと思います。
今回の研修旅行ではそれぞれの国で手話とろう教育関係に携わっている大学やろう学校、関係者の話を聞きましたが、 どの国も人工内耳の話が多く出ていました。 人工内耳が進んでいることによって手話での教育がこれから変わるのではないかという意見や、ろう者が減ってしまうのではないかという話もありました。 一方で、手話の研究は進んでいましたので、多少そのギャップを感じていました。


Mau: 人工内耳について、もう少し詳しく教えていただけますか?
誰にでも可能な手術なのでしょうか。また、その結果どの程度聴こえるようになるのでしょうか?

Chie: 人工内耳は、聴力が軽度であれば効果が出てくる可能性が高くなります。
重度であればあまり効果はないです。
ただ、手術を受ける年齢にも関係があり、 医学の世界では早ければ早いほど手術をした方が早く対応できるという見方になっていますのでろう者を生んだ親御さんに対して人工内耳をすすめています。 なお、人工内耳は頭の中に機会を埋め込むものなので スポーツや生活上の制限はあります。 また、一生メンテナンスが必要になるので生活上のリスクを伴うことになります。


Mau: Chieさんが今回廻られた国々では、人工内耳を積極的に勧めていくべきだという世論が優勢なのでしょうか?
「頭の中に機械を埋め込む」とお聞きすると、とっても怖い気がします。

Chie: スウェーデンの国王がイタリア訪問の際、「スウェーデンは93%の子どもたちが人工内耳を装用。13ヶ月目までに装用すればいずれは聴者のように聴こえるようになる」と公言したと新聞に載っていました。たまたま、スウェーデンにいるときに新聞に載りました。

他にも、人工内耳を装用している子どもたちが増えていることにより、手話の必要性がどうなるかという危機感を抱く人もいましたが、中には人工内耳を装用しても手話は使っていくという意見も出ています。 人工内耳は安全な手術かどうか、、、安い手術料で受けられるとは聞いていますが、
頭の皮膚を切ってドリルで頭の骨を少し削った後、 機械を埋め込んでいく作業です(詳細はまた調べて、別の機会に取り上げられたらと思います)。


Mau: ざわざわしてきましたよ~。
健康な「頭蓋骨」にドリルを入れることになりますが・・・そうなると、人工内耳についてはどう捉えればよいのでしょう。「治療」になるのでしょうか。考えさせれれます。 (さっき少し調べたら人工内耳手術は保険適用になるようですね)

Chie: 人工内耳は正直、意見がいろいろ分かれていますので複雑な問題ですね。
目が見えないから眼鏡をかける、と同じ感覚で、耳が聴こえなければ人工内耳をつけるという見方が、医学としての「治療」になるのだと思います。


Mau: なるほど。では、ちえさんが最初に言われた「ろう者が減ってしまうのではないか」というのは、誰から、どのような意味合いで言われる言葉なのでしょうか?

Chie: ろう者からの意見ですね。教育関係者からは、人工内耳を装用した後どのようにフォローしていくかという話を聞いています。

Mau: お話をお聞きしていると、みんなが「治療」してもらえる方が良いと思うのですが。フォローは、前向きな術後の取り組みになりますね。

Chie: 複雑だと思うところの説明が足りませんでした。人工内耳装用している方には何人か会ったことがありますが、 ほとんどの人が「あまり効果はない」と言っています。
確かに人工内耳を通して音楽を聴くことはできても、 コミュニケーションの面でなかなかうまくいかないことが多く、 周囲からは「人工内耳=聴こえる」という誤解によって 音は聴こえても、コミュニケーションとしての「ことば」が聴こえないことに対する理解がなかなか得られないという悩みをよく聞きます。
中には、人工内耳を捨ててしまいたいという声も出ています。
フォローについてはやはり、人工内耳を装用してしまった以上、人工内耳の装用についての話より、これからの教育が重要になってくるということですね。


Mau: うーん、一人ひとり個体差がありますし、本当に人それぞれなんですね。その方たちは小さいときに手術を受けられたのでしょうか?
スウェーデン国王が言われた「93%」は正確だとしても、そこからどれくらいの子どもたちがこれから本当に聴こえるようになるかは未知なのでしょうか?それでも親御さんは希望にかけるということなのでしょうか。

Chie: 人工内耳に関する正確な数字のデータは手元にないので分からないですが、私が会った人たちは小学生〜大学時代の間に装用した人ばかりです。幼少時に手術した人もいますが、彼女は「あまり必要とは思えない」と言っていました.親御さんにとっては少しでもわずかな希望を持ちたいという想いがあると感じています。 全員がそうだとは限らないのですが、スウェーデンの国王が公表するくらいなので人工内耳装用者はこれから急速に増えて来ているような気がします。

Mau: Chieさん自身は人工内耳の是非についてはどう考えていらっしゃいますか?

Chie: 正直なところ、人工内耳はあまり必要ないと感じていますが、 聴こえる親御さんにとってはやはり「聴こえている 方がいい」という子ども対する想いからつけていると思うと難しい問題だなと思っています。 昔は「人工内耳装用なんて絶対反対」と思っていました。
効果がないのに頭の中に機械を埋め込むなんてとんでもない!という感情だけ突っ走しっていました。


Mau: 確実な効果が保障されたなら、良いと思いますか?
ChieさんはChieさんとして生まれたのに・・・と考えるのは、聴こえるわたしのエゴでしょうか。そうかもしれません。
もし私がろう者だったら、そしてその可能性は未来にもあるわけで、その時に「少しでも可能性のあることは何でもしたい!」と葛藤するのは当然だと思います。

Chie: 確実な効果が保障されるとしたら良いと思ってしまう部分は否定できないですね。「もし聴こえていたらもっと違っていたかも」という想いは正直、まだ拭いきれずにいます。 でも、確実な保障(100%)でないことと手話がある限り、手術の選択はしないですね。

人工内耳については私自身も勉強が足りないので、これからいろいろな人に聞いてみます。


Mau: Chieさん、ありがとうございます。 私ももっと考えてみます。

Chie: こちらこそよろしくお願いします。6月に人工内耳に関する勉強会を予定していますのでまた決まりましたら、お知らせします。

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Mau: 今回は、福祉先進国と言われるフィンランド、スウェーデン、ドイツと廻られたわけですが、これらの国々の中では、どの国がぱっと見たところ暮らし心地が良さそうでしたか?

Chie: 暮らし心地が良さそうなのは、、、フィンランドですね。
無駄がなく、機能性を重視したデザインの建物や家具があって 出会った人たちも明るくオープンな人々でした。
スウェーデンは観光に良い場所ですが、フィンランドよりはまじめでおとなしいような印象を受けました。ドイツはハンブルクしか行っていないですが、おしゃれなファッションやいろいろな文化が入り交じっていて、漢字も大学の構内や中華料理店で久しぶりに見ました。


Mau: わあ!映画「かもめ日和」のフィンランドですね?ろう者の方々にとっても暮らしやすい工夫に溢れているのですか?

Chie: 実は映画を見る余裕もなくそのまま旅立ってしまいましたので今度見ようと思っています。ロケ地に行こうと話していましたが、少し離れていたので「お預け」にしました(笑) ろう者にとって暮らしやすいかどうかというと、 ハード面ではそれほど不便さを感じませんでしたが、実際に生活してみると社会的な課題は出てくると思います。

フィンランドにはデフハウスがありました。 スウェーデンにもありますが、フィンランドでのデフハウスで日本とフィンランドのろう者たちが手話を通して交流パーティを行っていました。 年配の方から子どもまでが一つの場に集い、日本の文化を紹介したり、フィンランドからの出し物に応じたりご飯を食べながら手話で交流しましたね。


Mau: 楽しそうですね!デフハウスというのは、ろうの方々が集まって暮らすグループハウスのようなものですか? 日本にはあるのかな?

Chie: そうですね。運営主体は地域によって異なると思いますが、フィンランドではヘルシンキとユバスキュラにありました。
日本ではこのように一つの場を使ってパーティや学習会を使う為のデフハウスはあまり聞いたことがないです。場所を借りたり喫茶店でサロンとして集まるところはあります。


Mau: そこに住んでいるわけではないのですね。

Chie: スウェーデンではそこに住んでいる人がいます。アパートの部屋としてろう学生が住んでいました(実際に見せてもらいましたが、これは学校と政府からの資金によって運営しているとのことでした)。 こと葉やのような部屋が、デフハウスの部屋になっている感じです。
日本と違って、行きたいときに集える場があるという、 生活の一部になっている印象を受けました。


Mau: きっとそこも素敵なお部屋なんでしょうねえ。写真は撮られましたか?中も、外観も見てみたいです~。

Chie: ビデオ撮りましたのでDVDでまとめようと考えています。

Mau: 上映会、教室でもやっていただきたいな~♪
スウェーデンは、手話も「公用語」の1つと聞きましたが、どのくらい手話は日常的に普使えるのでしょうか?
公共機関、病院、銀行などでも手話のできるスタッフが在中しているのでしょうか?

Chie: デフハウスの近くにあったピザ屋さんでは店員が手話を使っていましたが、マクドナルドでは違っていました。
注文するとき、日本ではメニューが手元にあるから手話ができない店員に対しても、指差しや簡単な手話で何とか通じます。
でもスウェーデン(オレブロ)では、メニューがなかったり、メニューの内容を書いたメモを差し出しても反応があまり良くなかったです。
生活レベルで、手話が広がっていると実感するレベルまでは至っていなかったです(短い期間の滞在でしたので、たまたま手話が使えない場所に行っただけかもしれないですが)。

でも手話とスウェーデン語のバイリンガル教育についての研究は進んでいました。スウェーデンの手話の教材開発として国が資金を出していることから、公用語として認められている以上、 研究ができる環境にあるのでは?という印象は持ちました。


Mau:「手話とスウェーデン語のバイリンガル教育」ですか。今まで考えたことが無かったです。
人口内耳、手話、 ・ ・ ・ 一人ひとりのそのときの状況に適した方法を探し続けることが可能な世界に私たちは生きていることを感じました。
足元を見つめなおして、また前を向いて歩いていく。皆さんにとってそんな春になりますように。


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今回は人工内耳という新たなキーワードが出てきました。わたしたちの「暮らし」の中にある「音」はどんなものがあるでしょうか。
次回も北欧の思い出を一部かじりながらの対談を予定しています。
今日もありがとうございました。
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by machi-life | 2009-04-03 00:01 | mau+chie life
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