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聴こえないわたし 聴こえるわたし ~ことば&暮らし~

それぞれの「ことば」を「知ること」からはじめよう
by machi-life
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第2回 (2009.2.27) キューサインってなんだろう?

    「聴こえないわたし」と「聴こえるわたし」がブログをはじめた理由

    ① 聴こえる人から見た「暮らし」、聴こえない人から見た「暮らし」とは何かを知る。
    ② ふたつの「暮らし」の違いや共通点を発見し、相互理解に扶助する。
    ③ 改めて「暮らし」について考えることで、わたしたちが毎日をシンプルにかつ豊かに
      送るための手法を探る。


"聴こえないわたし”-Chie

東京ディズニーランドオープンの年に誕生。手話講師
趣味は、写真、読書、映画鑑賞、ゴルフ

"聴こえるわたし”-Mau

“Imagine”が発表された年に誕生。英会話・スペイン語会話講師
旅、自転車、食べることが好き

☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆


Mau: ちえさんは、ろうの幼稚園に通われたということですが、小学校に上がるときに一般の小学校に入るか、ろうの小学校に入るかという選択肢はあったのですか?

Chie: 同級生の中にはそういう選択肢がありましたが、私の場合は重度の聴覚障害であることからそのまま聾学校の小学部(聾学校では、幼稚部、小学部、中学部、高等部という言い方)に上がると最初から(両親は)決めていたそうです。

同級生の中には、「社会の摩擦に慣れるために小さいときから地域の小学校に入った方が良い」という選択をした方、私と同じように「もう少し自分に自信が持てるよう育てていきたい」という親御さんの希望でそのまま上がる人もいました。。


Mau: 幼稚部~高等部まであるろう学校というのは、私が聞いたことがないだけかもしれませんが、普通にあるものなのでしょうか?

Chie: ろう学校によっては、幼稚部だけの学校もあれば中学部、高等部のみの学校、専攻科がある学校もあります。私が通っていた聾学校は、幼稚部から高等部までありました。

また、一つの県にろう学校が1~2校のみの場所もあります(例えば沖縄は、1校。新潟は2校あります)。


Mau: 近くに通えるろう学校の無いこどもたちは大変ですね。

Chie: 寄宿舎に入って通う子どもたちもいます。私の学校では、寄宿舎がろう学校の隣にあり、歩いて1分もかかりませんでした。週末に実家に帰って月曜日に寄宿舎へ戻るという生活で、私の友人も、早くて幼稚部時代から親元を離れて高等部まで寄宿舎で生活していました。

Mau: ええ!幼稚部からということは4歳~5歳から親元を離れていたということですか・・・。

Chie: そうですね。共働きの親御さんにとってどうしても育てられないとか事情はあったかと思います。または育て方が分からなかったというのもあるかもしれないですね。

Mau: 確かにそうですよね。いろいろな事情があると思います。

Chie: 寄宿舎生活によって集団行動に慣れてきた友人もいれば、寄宿舎生活は集団での規制を強いられるから途中で抜け出した人もいます。中には、煙草を吸ったことで謹慎を受けて寄宿舎で反省文を書いた友人もいました。

Mau: いろんなお友達がいたんですね~。
ちえさんは通学されていたのですね。小学校の時はどんなこどもでしたか?

Chie: 家族でろう学校に通いやすい場所に引っ越したので、毎日歩いて通っていました。小学校のときは、兄の影響でボーイッシュでしたが大人しかったです。

Mau: そ~ですか~(疑いの眼差し↑→)。

Chie:自分に自身がない一方、家の中では兄の影響でテレビゲームやスポーツをしていました。当時の写真を見たら「え?」と思うくらい、全然かわいくありません(笑)

Mau: ぷっ!!今度ぜひ見せてください。ブログに載せてもいいですか?(笑)

Chie: いえいえ、だめです(笑)お気に入りの写真といいますか、自分が写っている写真で満足できるようになったのは大学時代からです。それまでの写真は微妙ですね(笑)

Mau: それでは満足いくものを、今度お互いに載せましょうか。加工もかなりしたりして。

話を戻しますが、日本のろう学校では手話を積極的に教えないと聞きましたが、ちえさんの行かれた学校では、どのように勉強を教えていましたか?

Chie: 小学部時代はほとんど口話(こうわ)中心の授業でした。先生は口をゆっくりあけて話したり、キューサインを使いながら口を分かりやすくあけて話していました。

そのとき、手話があることは少しだけ知っていました。同級生の中に親がろう者という家族(デフファミリー)がいて手話での会話を見たくらいで、自分はまだ使っていませんでした。。


Mau: キューサインというのは、手話で言うところの指文字のようなものでしょうか?

Chie: それに近いですが、50音ずつ分けたサインではないですね。あ行、か行、さ行・・・それぞれに一つのサインが決められています。例えば、監督が野球でサインを出しますよね。このサインがどういう意味を示しているか、判断ができるのと同じように、「そ」だったら【「さ行」のサイン+口の形「お」】で「そ」と判断します。
このように、キューサインを使った方法をキュードスピーチと呼びますが、ろう学校によってサインが異なるため、成人の間ではほとんど使わなくなります。


参考URL:
(1)月間「記録」過去記事

(2)キュードスピーチと口形文字
 

Mau: 初めて聞きました。それを使って先生が話をしたことを見て勉強していたんですね。目が離せませんね!

Chie: キューサインができる先生が限られていましたが、とにかくずっと目を先生の方に向けて話を理解しようとしていました。簡単に言いますと、キューサインはやっている方も、読み取る方も大変な作業だと思います。

Mau: それでも手話よりもキューサインが好んで学校では使われるんですか?

Chie: キューサインは口話(口の形を見て読み取る)のための補助なので先生たちの間では覚えやすいことと、口話のためということで積極的に使われていました。しかし、手話となると、先生たちの間では不快な顔をする方もいました。手話をやると、口話の力が落ちるから辞めた方が良いという理由からですね。

Mau: 聴こえないちえさんたちにとって、読み取ることはまだしも、口の形を見て「音を出す」というのは果てしなく大変なことのように思えます。

Chie: 声を出すために、風船を触って音が響くまで発声したり、お菓子を使って舌の動きを一定に保てるようにしながらそれぞれの発音を出してみたり、うがいをしながら「か」が発声できるよう練習していました。先生や親が私たちの声を聞いてチェックしていました。苦手な子音は個人によって違いますが、私の場合はどうしても「は行」がうまく言えなくて、時々投げやりになりました(汗)。

Mau: 投げやりにもなりますよ!!

Chie: 「お昼」が「おいる」になって笑われたこともしょっちゅうですね。

Mau: 可愛らしいですけど(笑)。

Chie: そうですか(笑)でもそれが成人になってからだと、周囲からは変だなと思われますね。
それに自分がどんな声か、今でも分からないです。一生知ることはできないと思いますが、どうやら男性みたいな声だそうですね。


Mau: うーん、確かにそうですね。そして自分でも間違いが分からないからなぜ笑われるのか分からないこともありそうですね。男性のような声・・・ですか?うーん、そうかなあ。

Chie: 低音なのかも。

Mau: 男らしい声と言われたんですか??

Chie: 小さいときから言われていました。今でも言われますが、高等部時代までかなりコンプレックスでした。

Mau: ちえさんの声、私は好きですよ。あったかさと一生懸命に伝えようとしている気持ちを感じる声だと思います。
先ほどの口話訓練をして、どのくらいで授業ができるようになるんですか?口話をマスターしてから、本格的に授業が始まるわけでしょうか?それとも口話の練習をしつつも授業が平行して行われるのでしょうか。全く授業風景が想像できません・・・。

Chie: ありがとございます。口話の訓練は幼稚部時代から始めますが、小学部に上がってからも訓練と並行して授業が行われます、授業中に先生の話が理解できないことも何回かはありました。そのときは多少、聴力の良い同級生が通訳したり(それもキューサイン付き口話ですが)、先生が板書を増やして文字を通して分かるように授業を進めていました。

Mau: 教える方も、教わる方もみんなが分かり合おう!と学んでいる風景が浮かんできました。

Chie: 先生たちによっては、やる気がまったく見えない先生もいましたが、その先生は決まって人気がありませんでした。これはどこでも同じだと思いますが(笑)

Mau: その通りです!現在講師である私たちもそう見られているということですね。

つづく

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今回もより踏み込んだ内容で最後までお付き合いくださりありがとうございました。
次回の更新は、3月6日(金)を予定しています。
by machi-life | 2009-02-27 03:29 | mau+chie life
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