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聴こえないわたし 聴こえるわたし ~ことば&暮らし~

それぞれの「ことば」を「知ること」からはじめよう
by machi-life
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第1回 (2009.2.21) はじめまして


          「聴こえないわたし」と「聴こえるわたし」がブログをはじめた理由

    ① 聴こえる人から見た「暮らし」、聴こえない人から見た「暮らし」とは何かを知る。
    ② ふたつの「暮らし」の違いや共通点を発見し、相互理解に扶助する。
    ③ 改めて「暮らし」について考えることで、わたしたちが毎日をシンプルにかつ豊かに
      送るための手法を探る。


"聴こえないわたし”-Chie

東京ディズニーランドオープンの年に誕生。手話講師
趣味は、写真、読書、映画鑑賞、ゴルフ

"聴こえるわたし”-Mau

“Imagine”が発表された年に誕生。英会話・スペイン語会話講師
旅、自転車、食べることが好き

☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆

Mau:すみません、遅くなりました。

Chie: お疲れさまでした。こちらは先ほど、手話を使ったドラマを少し見ていました。ラブレターというタイトルで、平日の昼間に放送されているドラマです。

Mau: なるほど~ 見たこと無いのですが話題のドラマですね。面白いですか?

Chie: 普通の恋愛物語と変わらないので、単なる恋愛ものとして楽しめると言えば楽しめるかもしれないですね。

Mau: なかなか辛口ですね~。恋愛モノはお好みではないですか?

Chie: 辛口ですか~(笑)。恋愛もの、感動的なお話は好きですね。
このドラマを見て、周りでは手話を使う場面がおかしいとか、主人公の優柔不断に対する不満の話も出てきています(笑)。


Mau: なるほど・・・ちえさんご自身もドラマの手話はおかしいと思いますか?

Chie: 時々、日本語字幕のニュアンスと違うなぁと思う時はあります。

Mau: ちえさんが使っているテレビは、どの番組にも日本語字幕が付きますか?

Chie:このドラマの場合、音声なしの手話の場合は字幕がついています。
デジタルテレビの場合、新聞の番組表で「字」と書いてあるところには字幕がつくようになります。今までのアナログテレビの場合、「字幕」と書いてある番組を見るためには、テレビとは別に、専用の機器が必要でした。それに、「字幕」と書いていない番組には、専用の機器があっても字幕は出ないようになっています。
以前と比べたら字幕がつく番組は増えてきましたが、まだすべての番組につくとはいえない状態です。


Mau: ちえさんがこどもの時には字幕はありましたか?

Chie: 水戸黄門だけでした^^; 小学5年のときくらいでは、水戸黄門だけだった記憶があります。もしかしたら他の番組にも少しはあったかもしれないですが、ドラマには全然なかったので家族に通訳してもらっていました。

Mau: 家族のみなさんは手話ができるんですね。

Chie: いえいえ、手話はできないので、口話でゆっくり話してもらったりしていました。
通訳というよりは、今思うと、あれは要約でした。男女の会話シーンの場合、そのまま台詞を訳すのではなく、「彼は彼女の事が心配で、あれこれ言ってるんだけど、彼女は気付かないのよ」と要約して雰囲気を伝えてくれる感じです。


Mau: ちえさんは現在25歳ですね。

Chie: はい、今は25歳です。名古屋市出身です。

Mau: 生まれる前にちえさんが聴こえないということは、ご両親は分かるものなのですか?ダイレクトでごめんなさい!

Chie: いえいえ、今の医学は事前に分かるというような話を聞きましたが、私の場合、生まれて1年くらいで聞こえない事が分かったそうです。

Mau:どうして「聴こえていないようだ」・・・とご両親は思ったのでしょうか?

Chie:ある日にテレビを大音量にしたとき、私が少しも反応を示さないから異変に思って病院を回ったそうです。それまでに、両親はろう者という言葉も知らなかったし、聞こえない人が身近にいなかったので、さすがにショックを受けたそうです。

Mau: お兄さんは聴こえるんですよね。

Chie:そうです、2つ上の兄は洋楽大好きで語学が得意です。

Mau:両親、お兄さんも聴者でちえさんだけが聞こえないということは、ろうは遺伝とは言えないということですか?。聴こえないご両親から、聴こえる子供が生まれることもあるということですね。

Chie:ろう者だけの家族(Deaf family デフファミリー)もいますし、聴こえない両親から生まれる聴こえる子ども(Children of Deaf Adults:コーダ)もいます。実際、ろう者の9割は、両親が聴こえる人という話があります。医学的データがあるかどうか、そこまでは分からないですけど。

Mau: 聴こえないと分かってからは治療のようなものをされたんですか?

Chie: 補聴器をつけて訓練するようにという話はありました。
実際に補聴器を付けて音を確認したり、口を見て何を話されているかを読み取る訓練はしました。


Mau: 聴力があったのですね?補聴器はどのような人が付けると効果的なのでしょうか?

Chie: 聴力があったのかどうか分からないですけど、気がついたら補聴器があったという感じです。

Mau: そうですよね・・・・赤ちゃんですもんね!!うっかり!

Chie: 補聴器や人工内耳は残存聴力がある人には効果があるみたいですが、実際の効果については 「すべての人に効果が出る」とはいえないですね。

Mau: そうなんですか・・・「補聴器」を付ければ、少し遠いけれど聴くことができると思っている人が多いと思います。

Chie: 補聴器があれば少しは聞こえると思うんですね。でも、「聞こえる」のか「聴こえる」のかですよね。
音として聞こえていても、言葉として聴こえているかどうか・・・人の声が補聴器を通じて耳の中に音が入った場合、「聞こえる」。それが、例えば「おはよう!今日もがんばろう!」という言葉として「聴こえる」かどうか。


Mau: ちえさんの聴力は現在どれくらいですか?かすかには聴こえますか?

Chie: 全く聴こえないけど、補聴器を付けたらかすかに音が入るような感じです。私の場合は、言葉として判別することはできず、バイクや車の音と同じく、人の声も雑音として耳に入る感じです。
でもほとんど聴こえないし、補聴器をつけると頭痛が起きます(笑)


Mau: ひー!!

Chie: わけのわからない音が入り続けたら嫌になりますよね?

Mau: おっしゃるとおりです。

Chie: それと同じですね。

Mau: ちえさんが物心付いて、聴こえないことを「きちんと感じた」のはいつですか?

Chie: 小学1年の時だと思います。
私は最初からろう学校(幼稚部時代から)に入っていました。小学部に上がると、地域の小学校との交流が恒例になっていたので一ヶ月に1回のペースで地域の小学校に放り出されて(笑)。ろう学校との雰囲気も違うし、周りが一斉に私を見たこともあってなんだか違うな、と感じたのは覚えています。当時のろう学校の同級生は8人だけでしたので、一斉に30人のクラスの中に放り出されて泣いて過ごしていました(笑)


Mau: ええ~っ!

Chie: 泣き虫というあだ名がつくほどでした。

Mau: みんなで集まって何をするんですか?

Chie: 普段の学校生活と変わらず、みんなのペースについていきました。

Mau: 通常通りの授業も行われますか?

Chie: はい、授業では一番前の席に座らせてもらいましたが、さっぱり分かりませんでした。

Mau: 一日中ですか?!苦痛ですね。ろう学校の先生による手話通訳はなかったんですか?

Chie: ろう学校の先生としては、直接、自分自身の力で聴こえる人たちと交流をして欲しいという教育目的だったと思いますので、通訳しに行くということはありえませんでした。当時の私としては、正直、ろう学校に帰りたい気分でした。

Mau: 毎月1回の交流(授業)が、小学校卒業まで続いたんですか?

Chie:本当は卒業するまでに続ける行事なのですが、小学部6年になっても、泣き続ける私を見て親が心配して先生に何とか働きかけたのかもしれないですけど、取りやめになりました。周りの友人は地域の学校と交流できる事に喜びを感じていたようです。本音は分からないですが、ろう学校以外の場に行ける事や、聴こえる友達ができる事に喜びを覚えていたみたいです。

Mau: ちえさん自身はそこに楽しさを見出せなかったんですね。お友達を作るのは難しかったですか?

Chie:そうですね。当時は「何の為に交流するんだろう」と思っていたし、不安が大きかったです。周りが何を話しているかさっぱり分からなくて、分かったふりをした方が空気を壊さなくて済むんだなというように直感的に思っていました。だから楽しくないのも無理はないですね(笑)。

Mau: ・・・処世術を身に付ける場所になってしまいますね。

Chie: 同級生の中には積極的に交流していった人もいるので、交流自体はあっても良かったと思いますが、
聴こえる人たちとの付き合い方が分からなかっただけかもしれないですね。 


Mau: 今のちえさんからは想像ができないです。

Chie: でも、ろう学校から途中で聴こえる人たちの学校に入る(インテグレーション)人もいますし、 聴こえる人たちの学校から途中でろう学校に変わったり、そのままずっと聴こえない人たちに出会った事がないまま育っていく人もいるので、単に私自身が「聴こえる人たちと一緒にやっていく術を身につけられなかった」だけかもしれないです。後に、聴こえる人たちとの関わりが本当に楽しく感じる時があったので今の自分を見たら、当時の私は驚くと思います。

つづく

☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆

初回は、「話したい」「お伝えしたい」ことが溢れてしまい、長文になってしまいました。長丁場お付き合いありがとうございました。

次回は、来週金曜日(2月27日)に更新をする予定です。



by machi-life | 2009-02-21 18:30 | mau+chie life
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