聴こえないわたし 聴こえるわたし ~ことば&暮らし~

それぞれの「ことば」を「知ること」からはじめよう
by machi-life
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第9回 (2009.4.17) ”言葉の尺を通わせる”

「聴こえないわたし」と「聴こえるわたし」がブログをはじめた理由

    ① 聴こえる人から見た「暮らし」、聴こえない人から見た「暮らし」とは何かを知る。
    ② ふたつの「暮らし」の違いや共通点を発見し、相互理解に扶助する。
    ③ 改めて「暮らし」について考えることで、わたしたちが毎日をシンプルにかつ豊かに
      送るための手法を探る。


"聴こえないわたし”-Chie
東京ディズニーランドオープンの年に誕生。手話講師
趣味は、写真、読書、映画鑑賞、ゴルフ

"聴こえるわたし”-Mau
“Imagine”が発表された年に誕生。英会話・スペイン語会話講師
旅、自転車、食べることが好き 

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Mau:こんにちは~。時差ぼけは治りましたか?

Chie:治りましたが、なぜか寝不足気味です。でもおかげさまで元気に生活できています。そういえば、Mauさんの地域は野菜が美味しいんですよね。

Mau:北区には産直市場がたーくさんありますよ。

Chie:栄養不足になったらMauさんの地域に行きますね。

Mau:あはは~(笑) 北欧の食事はどうでしたか?

Chie:毎朝決まったメニューでした。パン、チーズ、ヨーグルト等。

Mau:北欧ならではのお菓子とかはありました?

Chie:フィンランドで子どもにプレゼントされたお菓子がありますが、せんべいみたいな大きさで味があまりないんです。

Mau:こどもせんべい?でもフィンランド人は好きだから食べているんでしょうね。

Chie:そうですね。他にも、フィンランド人がバーの前でタバコを吸っているのをよく見ました。

フィンランドにそんなイメージが全くなかったのでびっくりしました。寒い夜にずっと吸いながら雑談している姿を見て、あらためて日本のことをより知る機会になリました。


Mau: 今日も北欧での体験を交えながらお話をお聞かせくださいね。

Chieさんもお話していらっしゃいましたが、「手話は世界共通の言語」と思っている方は多いと思います。
私自身、実は手話に興味を持って調べて知るまでそう思っていました。ちょっと想像を働かせればすぐに、そんなわけはないって分かるはずなんですけどね!

北欧でもそれぞれの国に、フィンランド手話、ドイツ手話・・・などあると思います。細かい話になれば通訳を介さなければいけないと思いますが、日本手話ができるとあちらのろう者の方々ともちょっとした日常会話は通訳に頼らずともできるものでしょうか?

Chie: 北欧研修旅行で講義を受けるとき、ほとんどは音声言語の通訳と手話通訳が協力し合って進められていきました。
講師がろう者であれば、ろう者の参加者には多少伝わりますが、専門的な話になれば通訳を介さないと講義の内容を理解することはほとんど困難です。

講師がろう者であれば、フィンランド手話→フィンランド語→日本語→日本手話

フィンランド手話からフィンランド語に通訳する人、フィンランド語から日本語に通訳する人、日本語から日本手話に通訳する人で、一つのレクチャーにつき、最低3名は必要になります。


Mau: わお!伝言ゲームのようですね。フィンランド手話 ⇔ 日本手話へと直接通訳することは難しそうですね。それとも今回は、聴こえる参加者のためにあえて「日本語」を介しているのでしょうか?

Chie: 聴こえる参加者もいましたので、フィンランド手話⇔フィンランド語⇔日本語⇔日本手話、と、国際手話⇔日本手話⇔日本語という通訳の流れもありました。
国際手話というのは、世界レベルの会議等で使われる手話のことを指すのですが、まだ国内でも浸透していない手話です(「手話が世界共通」とは違うことなので後日に詳しく触れたいと思います)。

実際、1時間以上の講義を一人の通訳者が担うのは相当な労力になりますのでフィンランドの通訳者3名、日本人通訳者2名が臨むことが多かったです。
音声言語間(フィンランド語⇔日本語)は一人だけで担っていました(本当はもっと人材が必要なのですが、人材不足?なのか、当日はひとりだけでした)。


Mau: 通訳の方は、現地に住むプロの通訳士の方ですか?

Chie: フィンランド人の通訳者はどういう資格を持っているのかについては把握していないですが、現地のろう者の反応を見ると信頼を置いていたことと、ろう者との会話が円滑に進められていたのでプロであることに間違いはないです。
海外の手話通訳で、資格がいくつかあると聞いたことがあります。日本はプロと言えば「士」の範囲になりますが、音声言語の場合はどうでしょうか?
音声言語間の通訳で、通訳士という言い方(制度)があるかどうかについて、手話の場合は、「手話通訳者」「手話通訳士」という言い方がありますが、国家資格としては「通訳士」のみです。


Mau: 日本の場合、語学(音声言語)に関係する唯一の国家資格は、国土交通省が管轄している「通訳案内士試験」のみだと思います。
ただし、これは「海外から日本を訪れる方々への日本国内の観光通訳」がメインになります。それ以外の分野や、それら全部を含んだ「通訳技能を判定」する国家資格は存在しないようです。通訳として活躍されていらっしゃるほとんどの方が民間の通訳学校で学ばれて、そこから段々と仕事の幅を広げていく・・・と聞いています。
補足情報ですが、私が憧れている同時通訳者・鳥飼 玖美子さんが会長を務める、日本通訳翻訳学会 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jais/ というものもあります。

Chie:初めて知りました。アメリカの場合、手話通訳の資格がランク分けになっていると聞きました。
フィンランドでもアメリカのようにランク分けされた資格があるかどうか把握できていないですが、講義の間に通訳をされた方は現地のプロの方だと思います。


服装も北欧ではおしゃれ(ラフ)な格好をしていました。日本の手話通訳者は「その場にあった服装」といってもたいていは手話の見やすさにより紺色か黒色だったりします。あまり派手な柄があると目がちかちかして手話が見にくいことや、手話通訳者が目立ってはいけないという背景があるみたいですが、
私としてはもう少し個性といいますか、おしゃれな方がいいと思っています。実際に、おしゃれな通訳士はいます。
これが手話通訳の現状ですが、音声言語間の通訳はどうでしょうか?服装に関するモラル等決められていることはありますでしょうか?


Mau: 服装に関して言えば、・・・私は普段の生活でフォーマルな洋服を着ないので、スーツを着ると「よし!」と気合が入る方です(笑)。
普段愛用しているのは、黒いパンツスーツですが、デザインに凝ってみたり、中に着るインナーで個性を出すようにしています。また、ピアスをカラフルなものにしてみたり、お客様に差し上げるかもしれないメモ帳、お貸しするかもしれないペンなどを少し変わったものにしています。

でも例外もあります。外国からのお客様をおもてなしするために、県外の名所を巡ったことがありますが、このツアーにはカジュアルな服装で行きました。スーツじゃ浮いちゃいますから。
相手側からドレスコードを指定されない限り、露出をしすぎないことと清潔感を保っていれば何か言われたことはないように思います。本来の業務以外のことで、必要以上にうるさく言う方も中にはいるようですが、幸いにも私はそういう方とはお会いしたことはありません。手話通訳の世界は違うのでしょうか?

Chie:手話通訳の場合、地味すぎるところがあります。いろいろ言われた結果として、地味な方が無難と判断されたのかもしれないですが、中には結婚式に臨むときに
雰囲気等の情報を事前に集めて臨む方もいます。

そういえば、今回同行した通訳者は日本人ですが、二人とも英語に堪能な方でした。
時折、講義する人が英語で話す時、日本人通訳者は英語をそのまま聞いて手話に置き換えていました。
その二人に、頭の中の作業は「英語⇔日本語⇔日本手話」なのか、「英語⇔日本手話」なのかを聞いてみたところ、二人とも、後者であることが分かりました。日本語に置き換えている場合ではない、という理由も聞きましたが、英語から日本手話にそのまま置き換えられること自体、私にとっては新鮮でした。 (そのまま置き換えられるの意味は、単語をそのまま手話にあてはめるというのではなくて、意訳ができるという意味合いです。言葉足らずですみません)
このような頭の中の作業は、音声言語間の通訳経験者から見れば「普通のこと」でしょうか?


Mau: 私の場合ですと、やはりChieさんが会われた通訳の方のように、英語⇔日本語をそのまま置き換えていると思います。
ただただ素直に頭の中に言葉を通して、またくるっと向きを変えて訳すべき言葉が頭の中をフル回転するとそのまま出てくる・・・と言ったら、機械のようですし出来すぎですね(笑)。
もちろん、事前に準備をしていて、普段からも机上でも実践でも学んでいるのですが、言葉は生き物ですから、その人がどんな性格の人で、どんな言葉を使ってくるかというのは本番にしか分からないスリリングさはあるでしょうね。

私が想像する、プロの通訳と言われる方々の頭の中は、コンピューターでいうCPU(情報処理能力)が非常に正確かつ早いというイメージです。
その方たちの基盤になっているのは、高い母国語運用能力と、それと同等の通訳しようとしている言語力と文化的背景は不可欠だと思っています。
同時に、ほとんど無意識ですが、自分の中の母国語フィルターは通ってきているのだろうなあ・・・と漠然とですが確かに感じています。自分の持っている母国語力以上に、外国語力を上げることはできないだろうという想いからです。表現の幅は、何か比較するものがあってこそ、より生きてくると考えています。

特に、日本語⇔英語(又はスペイン語)という、私が現在扱うことの多い言語は、構造も、文字も、それを使用する民族、文化も、全て大きく異なります。
比較的土地も近く、語学上では親戚関係にあると言われる、例えばイタリア語⇔スペイン語といった言語の通訳をする時以上に、違いを意識して訳す必要があるのではと思ってます。

また、日本語は自分をへりくだって言ったり、湾曲表現の多い言語ですから、西洋の方に通訳するときにはそれをニュートラルに戻して伝えるようにしています。自己流なので、通訳のプロ(実務経験10年以上が目安)と言われる方々には、違うと言われてしまうかもしれません。

通訳は機械ではないので、「クライアントが私を通訳に雇うことで目的にしていること」が何かをはっきりさせて仕事をするとなると、ある程度その言語を使う人の背景は考えざるを得ません。ですから、日本語が母語で、いつか私が英語⇔日本手話をすることになったときに、自分がどうリアクションするのかは興味深いですね。
まだまだ手話は私の身体に“落ちていない”言語なので、想像することしかできませんが、手話を学び始めて、英語と手話の類似性も感じます。この辺りは、ビギナーの勘止まりで、詳しくご説明できませんが。

Chie: 英語と手話ができる通訳者はたぶん日本国内では少ないと思います。もし、まうさんが手話通訳士をとったら通訳に関する知識もあり、その言語を使う人の背景を考える立場としてとても心強いですし、研修旅行の通訳同行も可能ですね。最近のろう学生(ろう者の大学生)は海外へ研修旅行に出かけるようになりました。前にもドイツへ研修旅行に出かけたろう学生が、英語ができて日本手話もできる通訳者がいて本当に助かったという話を聞いたことがありました。

Mau: お役に立てる日が来ると嬉しいですね~。
Chieさんたちとの出会いによって、手話は身に付けたい言語の1つになりました。遠い目標に「手話通訳士」を置いて、楽しく手話勉強に励みま~す。

Chie: また、北欧では自分が手話通訳をやる場面に遭遇しました(通訳と言えるレベルまでほど遠いですが、通訳をしないといけない状況になりました)。
たまたま、現地の研究者(ろう者)がランチのときに同じテーブルに座ったので、アメリカ手話とジェスチャー交じりに話をしたところ、何とか通じました。しかし、その周りにいた参加者(同行者)は「???」の表情をしてこちらを見ていました。通訳してと頼まれて、通訳をしてみました。
最初は同じテーブルにいる人たちとも話の内容を共有できて良かったのですが、次第に、参加者からの質問や研究者の受け答えを通訳しているともどかしさを覚えました。「こういう意味ではなくてもう少し深く聞きたいんだけど、それにフィットする言葉が頭にない!」「知識があっても、それに対応する言葉がない!」というもどかしさです。
英語力があれば、筆談で英語を書いて伝える方法もあったのですが、その英語力さえもない私にとってお互いの手話は違えど、共通言語の一つである英語が使えないことが悔しかったですね。


Mau: 確かに、「これってなんて言うんだろう?」と言葉がすぐに出てこないときはもどかしいですね。

そんなときは、自分自身に「すなわち?言い換えれば?」と問いかけてみたり、相手の方に「たとえば、こんなことですか?」と例をあげてみると、いつのまにか話が軌道に戻ることは多いようです。

最近はろう者の方々に、英語やスペイン語を教えさせていただきたい欲が芽生えてきました。
まだ準備はできていませんが、Chieさん、将来は実験台になってくださいね!

Chie:実験台第一号としてお引き受けします(笑)スペイン語、大学時代に学んだことがあるのですが挫折してしまいました。 母語(日本語)としての知識を持っていても、英語や他の言語に置き換えられる語学力を持っていないと知識さえ伝えることも難しいと実感しました。語学力というのは、知識に対応したその国の言葉を使う力にも関わっていると思いました。例えば、手話でいえば、医療従事者が医学に関する知識を持ち、手話でもその知識を使えるようになって初めて手話の力があると言えるのだと思いました。
手話通訳は本当に大変な労力であると実感したのですが、その分、通訳がボランティアと見られてしまう現実があることは悲しいことですね。まうさんも通訳のご経験があるとお聞きしましたが、音声言語間の通訳でもボランティアと見なされるのでしょうか?


Mau: おっしゃられる通りだと思います。音声言語間の通訳でも、手話通訳のようにボランティア(無償)で行うこともあります。

また、「私はまだまだだから、ボランティアでしか英語の通訳はできないよ」という友達もいます。それはその人自身の選択で良いと思っています。

私の場合は、現在のように「語学」を使って仕事をしていないときはボランティア通訳を頼まれることが時々ありました。でも語学を看板に掲げてからは、安易にボランティアでお願いされることはないと認識しています。つながりで、最初はボランティアで引き受けることがあっても、仕事内容に満足していただければ次からは支払っていただくこともあります。ただ、ボランティアであれ、有償であれ、一度引き受けたらベストを尽くすということはいつも心がけています。自分の価値は自分で決める・・・って言い切りたいところですが、こればかりはお金を支払ってくださる相手がいることですからね~ :)。「あなたの通訳じゃあ、ボランティアでしょ!」と言われないように頑張ります。何もかも一期一会ですね、本当に。

Chie:今回の北欧での通訳経験から、まうさんとこのように通訳についてお話ができて本当にとても良い経験をさせていただきました(私の通訳を使っていた人には、情報量が少なすぎて本当に申し訳ないですが・・・)。

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北欧の話から通訳の話について、それぞれの体験を織り交ぜながらの展開になりました。

次回もどんな展開が待ち受けているか、ご期待ください。
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by machi-life | 2009-04-17 10:21 | mau+chie life
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