聴こえないわたし 聴こえるわたし ~ことば&暮らし~

それぞれの「ことば」を「知ること」からはじめよう
by machi-life
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

第8回 (2009.4.10) “デフハウスってなあに?”

「聴こえないわたし」と「聴こえるわたし」がブログをはじめた理由
    ① 聴こえる人から見た「暮らし」、聴こえない人から見た「暮らし」とは何かを知る。
    ② ふたつの「暮らし」の違いや共通点を発見し、相互理解に扶助する。
    ③ 改めて「暮らし」について考えることで、わたしたちが毎日をシンプルにかつ豊かに
      送るための手法を探る。


"聴こえないわたし”-Chie
東京ディズニーランドオープンの年に誕生。手話講師
趣味は、写真、読書、映画鑑賞、ゴルフ

"聴こえるわたし”-Mau
“Imagine”が発表された年に誕生。英会話・スペイン語会話講師
旅、自転車、食べることが好き

♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆  ♪  ☆

Mau: いよいよ新学期ですね。季節柄、ふらりと遊びに来ててくださる方が増えました。

Chie: ふらりと訪ねて下さる方がいると楽しくなりますよね。新学期でいつもよりバタバタしていますが、新潟市の桜は今日から咲くそうですね。

Mau: 早速ですが、今日はChieさんが気になった北欧での出会いについて教えていただきたいと思います。

Chie: フィンランドでは、世界ろう連盟理事長のヨキネン氏という方の講演を聴きました。ヨキネン氏はろう者ですが、複数の言語を勉強してきた方で 「ろう者だから夢を諦めるのはもったいない。自分ができるというイメージを常に描いておくべき」とメッセージを出していたことが強く印象に残っています。「聴こえないから無理なんじゃない?」と思う学生さんも、参加者の中にいたのですごく刺激になったと思います。

世界ろう連盟理事長 ヨキネン氏(特別インタビューに答えていただきました)

e0172983_1453728.jpg


Mau: ヨキネン氏の複数言語学習法が知りたいですね。「聴こえないから無理」と考える学生さんにとっては勇気を与えてくれたでしょうね。

Chie: 複数言語学習法について、常に本を読み、周囲にある情報をすぐに関連づけて言葉を覚えていったという話がありました。ただ、かなり忙しい方でしたので講演が終わるとすぐに仕事に戻っていた為、十分に聞けなかったのが心残りです。

このヨキネン氏の講演から思ったことは、大学生は先輩との関わりを持つことはあっても、社会で働く社会人の話を聞く機会が日本では少ないような気がしました。ロールモデルがないからこそ、不安に揺れやすいのかなとか、常に日本のこと、自分の体験の範囲ですが、日本と比較しながらフィンランド、スウェーデン、ドイツを回っていましたね。

Mau: 日本ではいろんな意味で「年齢」を意識しすぎる傾向にあるようです。

Chie: 大学生といえば、20代というイメージが強いのもその表れですね。スウェーデンのオレブロ大学でも、子どもを連れてランチしている学生がいました。本人の話によれば仕事を辞めた後、勉強しているとのことでした。

Mau: ちえさん自身がロールモデルを求める時期もありましたか?

Chie: 学生時代は強く求めていました。聴こえない人はどうやって周りとコミュニケーションをとるのだろう、が一番の関心事でロールモデルを求めていました。参考にしたかったんだと思います。

Mau: 見つかりましたか?

Chie: 見つかったような見つからなかったような。そのときに、100%真似をすればいいわけではなく、いろいろな生き方を参考にして自分なりの色を出していく事に気がつきました。そういう意味では、ロールモデルはいました。

先輩と語りながら、時には怒られましたが、いろいろな先輩を見ているうちに「自分だったらどうするのか?」と考えられるようになりました。
でも、これは幸い、ろう者の先輩が多く在籍していた大学だったからこそできたことだと思いますし、ほとんどの学生は他団体の活動に関わったり知り合いのつながりで先輩と出会いながらロールモデルを見出すと思います。

でもヨキネン氏のように複数の言語を持ちながら世界レベルの組織で働いている人と出会う事は、なかなかない機会なので私も本当に、人と人が接するときのコミュニケーション面で参考になったところがあります、初対面の人に対しての挨拶や、講演を進める時の方法、質問の受け方について参考になりました。


Mau: 自分にはない部分を持つ誰かと出会うから、じゃあ私はどうなのよ?と比較しつつ考えることができるのでしょうね。いつも側にいる身近な人から、世界中で、国境なんて軽々と越えて働いている人もいる。そんな人たちに出会うと、自分は今此処で何をしようとしてるんだ?って考えざるを得ない。そんな時期がきっとみなさんにあるのでしょう。素敵な人に会うとその人を真似てみたくなったり。

ちえさんも「日本に持ち帰りたい、自分にも取り入れたい」素敵な習慣、言葉などにたくさん北欧で出会われたでしょうね。

Chie: そうそう、「すてきだな、この人」と思う人と出会うと真似をしたくなりますね。北欧では同じ日本人の方からも刺激を受けました。

中でも一番印象強かったのは、ドイツで出会った日本人でした。ドイツに留学した後、ハンブルク大学の手話研究員になっている人でした。ドイツ手話ができる聴者だったので、なおさら「悔しい」というか、驚きました。こういう人もいるんだ〜と感心して、ますます関わりたくなりました。


Mau: よっぽどその人自身に何か特別なものがないと雇われない職場環境ですよね。

Chie: まだ働き始めたばかりと聞きました。
そうですよね。たぶん、その人自身にしかない物があるのだと思います。
初めて会った時は話しにくいと思ったのですが、実家が近いことが分かった後お話しする事ができました。


Mau:これからの展開が期待される出会いをされたんですね。

さて、さまざまな国で、いろんな立場のろう者や難聴者の方に会われたと思います。現地の方々から、ちえさんたち、日本からの研修者に対して投げかけてきた問い、逆にちえさんたちが、興味や関心を持って質問したことの中でどのような内容が心に残っていますか?

Chie: 研修先で出会ったろう者たちは、世界規模の組織の役員から地域の高校生といった、幅広い年齢層と関わりました。
中には、ロシアからの移民もいました。投げかけれた質問についてですが、高校生からは軽く日本の文化(漫画、趣味)に関する質問がありました。特に印象に残っている質問ですが、レクチャーの後に「日本の場合はどうなの?」という質問があったことですね。例えば、フィンランドでデフハウスといった場の説明があったとき、「日本にもこういう場所はあるの?」という質問でした。日本のことをどのくらい知っているかを問われる質問で、幸い、手話関係の仕事の経験で比較することができましたが、学生さんにとってはたじたじだったかもしれません。


Mau: 日本の学生ということですか?全国のろう者同士のネットワークは盛んではないのですか?

Chie: 学生=今回参加された日本の学生です。全国のろう者同士のネットワークについて、学生同士の集まりはありますが、今回の参加者はその集まりの非会員(入っていない、もしくは興味がなかったり情報がなかったり)でした。

Mau: なるほど、興味が無ければ情報源も限られてしまいそうです。

Chie: 今回の参加者は特に非会員が多かったです(会員もいました)。

Mau: 他にはどんな質問がありましたか?

Chie: 現地の方から質問されることは少なかったように思います。こちらから質問をして答えを聞いてはまた聞くという展開でしたね。
参加者の中に起業をした人がいたのですが、デフハウスの管理者に対して、「運営はどのようにやっているんですか?」と質問したことが一番印象に残っています。
学生でしたら「デフハウスいいなぁ、作りたいな」という感動で終わりましたが、その人は「なぜ運営ができるのか」と最後まで聞いていました。ビジネスをやっている以上、当然の質問ですが、手話講師をやっている今、その人の質問にすごく共感できました。


Mau: なぜ、「デフハウス」を良いと思いましたか?変な質問に感じだらごめんなさい。私の中ではまだイメージできていないみたいです。

純粋に疑問なのですが、日本にも、公民館やら福祉会館から、ハンズさんの事務所・・・場所という「箱」ならたくさんあるような気がします。どういった違いが、デフハウスと日本にあるそれではない物にあるのでしょうか?

Chie: たぶん学生さんたちが「良い」と思った理由としては、一つの家に感じたからなのかもしれないです。
アットホームで、そこに行けば必ずろう者の仲間がいるという安心感が持てる「場」としての憧れです。福祉会館にある聴覚障害者協会の場はどこか入りにくそうなイメージがあります。

フィンランドで見たデフハウスはそういったイメージがなく、一つの家族みたいに生活しているように見えたからこそ、憧れたのだと思います。(フィンランドでも実態は分からないですが)


Mau: 「自分たちで自主的に」というよりも、「さあ、ここを用意したから使いなさい。ただしこちらが決めた規則は守ってもらうし、活動はしてもらうよ」という日本によくありがちな(イテッ!)イメージでしょうか。

フィンランドのデフハウスとは、大きく活動目的が違うようですね。ちなみに聴覚障害者協会はろう者の方々が運営されているのでしょうか?フィンランドのデフハウスは、好きなときに、好きなことをするために(しなくても)、個人がただそこに誰に気兼ねをすることなく存在することのできる場所なのかな?

Chie: そんな感じですね。聴覚障害者協会は聴者とろう者が一緒に運営していますが、場所によっては「聴こえる方にお任せ」があるかもしれないです。デフハウスがオープンしている時はいつでも入って良いという雰囲気は感じました。

Mau: ちえさんもデフハウスは日本に必要だと思われますか?

Chie: 日本にデフハウスは必要か?と聞かれますと、ちょっと違うような気がしています。デフハウスというよりも、ろう者だけが集まるのではなくて、聴者も気軽に入れるような場が必要ですね。

Mau: ろう者の方々にとって、ゆったりと集える公の場所は少ないのでしょうか?

Chie: ろう者が集まる場、例えば手話サークルがありますが、今は聴こえる人たちの楽しむ場になっていることがあり、ろう者にとっての楽しみがなくなり、サークルに行きたがらない人も多いです。
学生にとっては、全日本ろう学生懇談会という組織でお互いを高め合っていますが、社会人にとってのくつろげる場といったらほとんどないかもしれないですね。

聴こえる人たちとの関わりが持てるから必要としない人が増えているのか、それとも、たまたまそういう場がないだけなのか、私自身も社会人ですが、よく考えてみれば「ここに行けばろう者、聴こえる人たちと大人の話ができる場」といったら限られると思います。


Mau: でもそれは聴こえる人も同じかもしれませんよ。

Chie: 手話が認識されていなかった時代と比べて、手話が少しずつ知られたり携帯電話やパソコンの発展、そして聴こえる人たちと一緒に教育を受ける環境の中で、「聴こえる人たちとの関わりを持てる」ようになったと思います。一昔のろう者と比べて今の若いろう者にとっては、そこまで集える場所を必要としなくなったのか、必要と思っても「ない」から仕方ないのか。。。

デフハウスに憧れるのは単純に、アットホームで気軽に交流ができる場が欲しいという憧れであり、そういう場がないことの表れなのでしょうか。


Mau: 2月末に、現役大学生や専門学校生の方々と一緒に勉強会をしました。その際に少なくない人数の学生が、「携帯で話は全部しちゃうから、実際に会うと話すことがなかったり、本音が言えなかったりする」と言っていました。

彼らがそれを良しと思っているのであれば、携帯チャットやメールもコミュニケーションの促進に役立っていると思うのですが、いざ対面して会話をするときには携帯で感じていた「親近感」のようなものが不足していると感じるのは、なんだかなあ・・・と。
でもそれって最初の気付きなんじゃないかって思いますね。「便利な」ものに対して疑問を感じることは、正しいセンサーが働いている証拠なんじゃないかって思ってます。

近くにいて、直接話ができるのにも関わらず、大事なことは携帯で・・・というスタイルは本当に自分が望んでいるコミュニケーションの形なのだろうか?・・・と。
日本でデフハウスについて考えるときも、そこへ集う私たち自身にも表面的ではない、何かしらの決断や挑戦に迫られそうですね。

Chie: そうですね。時代の背景といったら何だか寂しいですが、きっかけがあれば必ず変わると思います。かつての自分も、それに近く、今思えば「なぜもっとはっきり言えなかったのかな」と時々思います。その理由を根本的に考えると結局は傷つきたくないというわがままなのかもしれないですし表面で仲良くやっていれば何とかなるという変な安心感に頼っていました。

でも社会人になって特にハンズを通して、はっと気付かされました。
建設的な話し合いができる喜びとか、ぶつかりあって信頼関係を作ることの経験がない限り、携帯電話での会話に満足。その一方で、コミュニケーションって何だろう?と見つめ直すのは希望が持てますね。


Mau: そう思います、人間、そうこなくっちゃ!考える頭を活用しないと~(笑)

Chie: ですよね。 人間らしい生活をしなきゃいけないですね〜。
今回の旅行で、 「考えることをやめたら、本当にダメになる」と思いました.


Mau: その心は?


Chie: 一緒に参加した学生さんたちとの話で「そういうことにこだわらず、どうでもいいじゃない」という態度にカチンと頭に来たんですけれどそれは、「考えることをやめちゃいけない!」と思ったからなんですね。


Mau: そんなことが北欧であったんですね。外との出会いの他にも、内なる出会いが。

Chie: 13日間を共にするメンバーなので一人一人と話をすることがとても良い刺激になりました。

Mau: ですよね~・・・みんなそれぞれ目的も違うでしょうし、単純に「わーい北欧旅行!」で来ている人もいるでしょうし・・・。

Chie: そうですね、そうです。

Mau: このブログ、みなさん見てるかな?

Chie: 見ていてくれたら嬉しいです。私の意見に間違いがあるかもしれないし、学生さんなりの意見も貴重なのでこのブログを読んで、何かを感じ取っていただけたら嬉しいです。学生さん、教育関係者、社会人や手話通訳者との出会いによって、あらためて考えることの大切さに気付かされましたし、きちんと向き合えば学生さんも可能性を秘めていると分かりました。

Mau: そうそう、同じタイプの人たちといても、居心地は良くても刺激は受けない。「なに~??!!なんだと~!」というところから、始まってますよ、私の場合何事も(笑)。手話場合もそうですもん。新しい可能性を、わたしもちえさんたちからいただいています。

Chie: ありがとうございます。私もまうさんとこうして話をするたびに自分の考え方を整理できたり、まうさんに言われることで「そういえば、どうなんだろう?」と新しい視点を知ることができます。
旅行中、学生さんに厳しいことを言い続けていたら、最終日に「ありがとうございます」と言われました^^;本当は考えれば、できる人なのでどうやって育てていくかが私としての課題だなと思いました。同時に、自分自身も育てなきゃいけないですね。


Mau: ちえさん、かっこい~い!ヒューヒュー!!

Chie: Wow !ありがとうございます(笑)

Mau: 葛藤しつつ、それもまたいいか、いやだめじゃないか?と肯定も否定も繰り返しつつ、傍らに友が居てくれたら嬉しいですね。これからもよろしくお願いします。

Chie: ありがとうございます。かなり揺れる私ですが、これからもお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

<参考HP>

Nordic Deaf Associations
http://www.sdrf.se/sdr/dnr/ENG/index.html

Scottish Sensory Centre
http://www.ssc.education.ed.ac.uk/courses/deaf/finland.html
[PR]
by machi-life | 2009-04-10 08:50 | mau+chie life
<< 第9回 (2009.4.17)... 第7回(2009.04.03)... >>